コーヒーカップの把手のお話

コーヒーカップの把手は右向きでサーブするのが正しいのか,左向きでサーブするのが正しいのか?

 

普段あまり気にしたことはないと思いますが,珈琲店を経営していた頃には一応「どうすべきか?」悩んだ時期がありまして。。


「カップの把手を左側にセットするのは『イギリス式』で,把手を右側にセットするのは『アメリカ式』らしい」

 

という漠然とした知識はずいぶん昔に読んだ本で得ていたのですが,詳細に関してはまったく知らず,これまた少し調べてみました。

 

わたしがおぼろげに記憶していたのは,


通常,シュガーとミルクを入れる場合に右手にスプーンを持ってかきまぜるため,そのときに把手が邪魔にならないように配慮しているのが「イギリス式」で,ブラックで飲む人が多く,右利きが多いのであれば把手は右の方が合理的だとしているのが「アメリカ式」

 

といった感じなのですが,調べてみると。。う~ん。。上記のコメントでも間違いではないようですが,ちょっと細かいニュアンスが違うかな?

 

そもそも,把手を左側にサーブするのがイギリスの紅茶マナーから来ていることは間違いないようです。


その昔,紅茶を(熱いまま飲む習慣がなかったため)カップから皿に移して飲んでおり,この場合左手でカップを持ってお皿に注ぎ,右手でお皿を持って飲んでいた。


という話や,16~17世紀頃に盛んに行われていた「ティーパーティー」において,左手にカップを持ち,右手に菓子を持って飲食する習慣があったことから,予めカップの把手を左に向けてセットするようになった。


というような話もあるようですが,その後19世紀ビクトリア女王の時代にこの「カップの把手を左に向けてセットする」ことが「ティーの正式作法」とされたとのこと。


それが日本に伝わり,宮内省作法として採用され,さらに帝国ホテルがこれを始めたそうです。


※イギリスの「ティーマナー」では,カップはセットされたまま左手に持って飲むのが普通(別に右に回して右手で持っても構わない)らしいですが,日本では左にセットされた把手を右に回す動作が茶道の作法に似ていることから,「右に回して右手で飲むのがマナー」のような風潮があるようです。(わたしはこのあたりの礼儀作法を習ったことはないので,間違っていたら指摘してくださいませ)


ところが,イギリスを除く欧米諸国ではこの辺のマナーはまちまちで,各国によって異なるのは勿論のこと,各国内においても統一されていない国が多いそうです。

 

ちなみに,アメリカ陸軍の礼式では最初から把手を右にセットすることにしていて,これが戦後日本に伝わり,「右把手はアメリカ式」ということになったと考えられます。


※「スプーンでかき混ぜるときに邪魔にならないように最初は把手を左向きにセットする」ってのは諸外国ではあまり関係ないみたいですね。これも日本特有のこだわりなのでしょうか?。。。まぁこういう「細かい気配り」も嫌いじゃないですけどね。


その後,「左向きにセットされたカップを右に回して飲む」作法をえらく気に入った日本の多くのホテルが,ティーカップだけではなくコーヒーカップも左向きにセットするようになり,それが一般にも普及して「コーヒーカップの把手を左向きにサーブする」喫茶店が増えたようなのですが,面白いのは,最初に「ティーマナー」としての左向きセットを導入した帝国ホテルではコーヒーカップの把手は右向きにサーブされるらしいです。(勿論ティーカップの把手は左向きにサーブされるらしい)


※これ,誰か帝国ホテルに行って実際に確認してきてもらえませんかね?。。本当かな?


別にカップの把手がどちら向きでもコーヒーの味には変わりはないと思いますが,今度喫茶店に入ったときはちょっとだけ気にしてみてくださいませ。